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LiDARによる3Dデータを活用した橋梁メンテナンスサイクルの効率化
平成26年の道路法施行規則において,道路橋の点検を近接目視により5年に1回の頻度で行うことが義務付けられています.しかし,現在の近接目視では,損傷や腐食等の材料劣化や外観変状がわかるのみで,通行の安全性・落橋の可能性・通行止めの必要性・補修の必要性などを明確に判断することは極めて難しいです.また,近接目視を行う際には,足場の設置やロープアクセスが必要になる場合が多々あり,安全面に問題を抱えています.加えて,市町村では財政難のために足場や高所作業車の手配が困難な場合があります.
このような課題に対処するために,iPad Proにも搭載されているLiDARを用いて,3Dデータを活用した安全で効果的・効率的な橋梁メンテナンスサイクルの構築を目指しています.実橋梁への利用のために実験室で行えるコンクリートのはりの変状計測や実橋においてどのような部材に適応できるかの検討を行っています.下には研究の流れを示しています.



光学的計測法を用いたコンクリートの内部欠陥形状の推定

コンクリートのうきは致命的な損傷であるにも関わらず,詳細な発生メカニズムが明らかになっているとは言えません.その背景には,橋梁が雨水や塩分飛来といった腐食環境だけでなく,車両の通行による繰り返し荷重を起因とした疲労環境などを含めた複数の要因から起きた複合劣化であること,うきがコンクリート内部の損傷であるため,ひび割れ発生進展の状況が未解明であることが挙げられます.
そこで本研究では,腐食と疲労の複合劣化環境を再現し,発生したうきに対して赤外線法とコンピュータ断層撮影法(CT(Computed Tomography))を使用し,コンクリート内部欠陥形状の推定,うきの発生メカニズムの解明を行うことで,コンクリートのうきに対する新たな非破壊検査技術の開発と,効率的な維持管理手法の提案を目的としています.
本研究の実用手順は,初回点検時にコンクリート表面を赤外線カメラで断続的に計測します.その後,計測した複数の温度データを用いて,欠陥の深さや範囲といった指標から内部欠陥形状を推定します.次回点検時も同様に行い初回点検時の推定結果と比較することで,ひび割れの進行性を定量的に評価し,うきの発生原因であるコンクリート内部のひび割れの進展性を精度よく予測することが可能となります.



橋梁定期点検データの分析および機械学習の利活用


プレキャストコンクリート部材の圧着式接合工法とPC圧着工法の耐荷性能評価

プレキャストコンクリートは,工場であらかじめ製造したコンクリート部材のことであり,生産性や品質向上の観点から注目されています.
しかし施工現場まで運搬する必要があるため,運搬の際は重量やサイズに制限があり,制限を超える場合は部材を分割することになります.分割した部材は施工現場で組立てるため接合部が設けられますが,その接合部においては漏水などの損傷が発生しやすく,耐久性への課題となります.
そこでこれまでの研究では,接合部の耐久性向上を目的とした「圧着式接合工法(略称PJ工法)」を提案し,隅角部に接合部を設けた大型ボックスカルバートを製品対象として,正負交番載荷試験および数値解析を実施してきました.



本研究ではPJ工法の汎用性を高めるため,カルバートの頂版や側壁での接合部を想定し,スラブ型試験体によっても検証を行っています.
また,長スパンの部材接合に利用されているPC圧着工法についても,正負交番載荷試験および数値解析を実施しました.接合部の設計手法として,PJ工法はRC構造,PC圧着工法はPC構造により評価を行っています.
実験の様子
スラブ型解析モデル
ふっ素塗装鉄筋のコンクリート部材への適用性

2021年7月に北海道の白神覆道で鉄筋腐食によるうきが原因と考えられる,3tのコンクリート片が落下する事故が生じました.
現在,鉄筋腐食の防止という観点からエポキシ樹脂塗装鉄筋やステンレス鉄筋が使用されていますが,より高性能な塗装鉄筋を開発するために本研究では,ふっ素塗装鉄筋のコンクリート部材への適応性を明らかにすることを目的に研究を進めています.
ふっ素塗装鉄筋を実現するために鉄筋曝露試験,付着強度試験,RCはり静的曲げ試験を実施します.鉄筋曝露試験は塗装鉄筋の防食性能,付着強度試験は塗装鉄筋とコンクリートとの付着性能,RCはり静的曲げ試験は塗装鉄筋の曲げ補強筋としての性能について解明を行います.
また、付着強度試験から得られた付着特性を用いて数値解析モデルを作成し,RCはり静的曲げ試験の数値解析モデルに適応させ,ふっ素鉄筋のより詳細な挙動を解明しています。


コンクリート片落下事故
※国土交通省北海道開発局函館開発建設部
付着強度試験
RCはり静的曲げ試験

鉄筋曝露試験


解析モデル
小規模橋梁を対象とした力学的特性の検討

市町村管理の小規模な橋梁の多くは,上部工の老朽化が特に進んでいる状況にあります.さらに,これらの橋梁の周辺には狭隘な道が多く,架け替え時の資材の運搬や施工が難しいという条件があります。
これらの課題を解決する一手段として,炭素繊維緊張材(Carbon Fiber Composite Cable,CFCC)を用いた軽量で高耐久性を有するPC床版を開発しています。CFCCは非腐食性のためかぶり低減による床版の薄肉化が可能です。
そこで本研究では,数値解析によるかぶり厚さの検討,CFCCを用いた高耐久性PC床版の実用性などについて検討しています。具体的には,プレストレス導入による定着性能と曲げ性能について検討しています。
プレストレスト導入による定着性能
対象物周辺の狭隘な路地
曲げ性能

補強筋の腐食




上部工の老朽化
数値解析モデル
現状の小規模橋梁の課題






積層造形技術による部材の造形および小規模橋梁上部工の概略設計
積層造形とは材料を一層ずつ積み重ねて三次元の物体を作る造形技術のことであり,現在は溶接ワイヤ積層造形について技術開発中です.
本研究では,右図のような特徴を活かし鋼構造物に適用させることを目的とし,小規模橋梁を造形することを検討しています.


造形設備
橋梁の解析